親知らずの症例
「複数本の親知らず」
Case.1
上下同時の親知らず抜歯
治療の背景
右上下の親知らずは縦向きに生えており、歯の頭の部分は歯茎からしっかりと出ていましたが、顎のスペースが足らず、共に外側にズレて、傾斜している状態でした。奥歯で清掃が行き届きづらいこともあり、大きなむし歯になっていました。歯周ポケットも深く、歯周病細菌の温床にもなってしまうことから抜歯することになりました。
また、こちらの症例は患者様のご希望により上下同時の抜歯を行いました。
当院では4本同時の親知らず抜歯も可能ですが、基本的には左右分けての抜歯をお勧めしています。抜歯した後の痛みや腫れが強く出た際に、術後しばらくお食事がしづらくなります。抜歯した反対側を使ってその間食事を取ったほうが日常生活への支障が少ないためです。
右下親知らずの根の先は神経・血管の束と距離が近く下唇麻痺のリスクがあります。右上親知らずの根の先は、上顎洞という鼻の横の空洞に貫通している状態であり、抜歯すると、お口の中と鼻の横の空洞が繋がってしまうことになります。
ほとんどのケースではこの穴は血のカサブタで埋まり、自然に治っていきます。ごく稀に、この穴がずっと閉じないことがありますが、その場合は、その穴を閉鎖するための別の手術が必要になることがあります。
非常に稀ではありますが、わずかでもリスクがある以上は「聞いていない」では済まされませんので、当院ではしっかりとご説明させて頂きご理解ご納得頂いた上で抜歯を行なっております。
抜歯前の右上親知らず
抜歯前の右下親知らず
抜歯前エックス線写真
CT画像
抜歯した親知らず
抜歯した右上親知らず
抜歯した右下親知らず
主訴 | 親知らずが虫歯になったので抜歯したい |
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治療内容 |
別部位の治療目的で撮影したCT画像があったため、これを用いて三次元の位置関係を精査した上で抜歯を行いました。 抜歯後は血のカサブタ(血餅)がうまくできそうな状態であったため縫合せず、術後感染防止の目的で、殺菌・消毒作用のうがい薬を処方し、止血後は術部を清潔に保ってもらうよう指示しました。 |
治療時間 | 約10分 |
治療期間 | 1日 |
治療のリスク | 術後に痛みや腫れを引き起こすことがある かさぶたができず、術後に血が止まりにくいことがある 一時的にあざができる可能性がある 下歯槽管神経を損傷してしまう可能性がある |
治療費 | 上下合わせて 約3,000円 |
経過 | 抜歯の前の段階で、歯磨きが上達し、歯垢や歯石の除去をしっかりと行った上で、周囲の歯茎の炎症がない状態での抜歯であったため、術後の経過は良好で、痛み止めは抜歯当日のみの服用でした。 お口の中の細菌の量が少ないほうが、術後の感染が起こりにくいため、当院では、術前のクリーニングや、術後のケア方法の指導などにも配慮しています。麻痺は出ず、上顎の穿孔部もすぐに、血のカサブタで閉鎖され、問題はありませんでした。 |